身近な川の生きものを通して環境や命の尊さを学ぶ

はじめに

水みらいプロジェクト2025では、県下2つの小学校が「チャレンジ!学校水族館」の企画に取り組みました。
それぞれの学校で児童たちは、川や海の自然を観察し、採集した水生生物を飼育・観察。試行錯誤しながら、生きものが棲む地域の環境、いのちの大切さを学びました。
地域ならではの特徴的な水生生物に着目し、クラスメートや保護者、他校の児童に向けた発表では、劇やイラストを活用するなど、より学んだことが伝わるよう工夫を凝らす児童が目立ちました。
その姿はテレビの特別番組で放映され、地域の自然を学び、野外での体験に挑戦する重要性が表れていました。
本プロジェクトを実施するにあたり、成功に導いてくださった参加各校の教員、保護者・地域の方々、魚津水族館の皆様などに対し、深い感謝の意を込めてこの記録集をお届けします。あわせて今後も一層のご協力、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

水みらいプロジェクト2025実行委員長
竹内 章

伏木小学校

高岡市の伏木小学校は4年生が挑戦。
海岸の生き物を飼育・観察すると、海が抱える問題が見えてきました。

生きもの採集

最初に挑戦するのは高岡市立伏木小学校の4年生。
9月に訪れたのは学校近くにある海辺、雨晴海岸です。まずは、魚津水族館の門田(かどた)さん・吉岡さんと一緒に、海の生き物採取を行います。

魚津水族館 門田 信幸 学芸員
岩と岩のすきまにエビとかカニがいます。その隙間に網を差し込んで掬ってください。


海の中には、どんな生き物がいるのでしょうか。

4年生
おったおった!フグおるんやけど!おるおるおる!


姿は見えるものの、すばしっこい生き物たちに、悪戦苦闘。思うようにつかまえることができません。

4年生
もう無理かもしれん 終わりや~。
4年生
なんもとってない~。
魚津水族館 吉岡 映美 学芸員
魚はね、ばしゃってやるより追い込んだ方が捕まえられるんよ。

アドバイスを参考にして繰り返すうちに、コツをつかんできたようです。

4年生
エビめっちゃとれた!一気に4匹!
4年生
ヤドカリです!

次々と生き物を捕まえる児童たち。
そしてついに、魚もつかまえることができました。

魚津水族館 門田 信幸 学芸員
これはドロメです、ハゼの仲間です
富山県は磯場が少ないんですけど、(雨晴海岸は)磯場の広がる唯一の場所と思ってます。こういった自然を通じて地元富山にもたくさん生き物がすんでいるということを学んでほしいと思います。

およそ1時間ほど採取を行った後、生き物の解説が行われました。
この日、ヤドカリやエビ、ドロメなどたくさんの生き物を捕まえることができた児童たち。
捕まえた生き物は、学校に持って帰ることに…

この生き物たちを、児童たちはこれから飼育することになります。

4年生
楽しかった。毎日えさをあげて様子を見て育てる。
4年生

(水槽を)楽しいところにしてあげたいから、きれいに掃除とかもして、元気に育てたいです。

ついに始まった、水みらいプロジェクト。
生き物の飼育を通して、児童たちはどんなことを学んでいくのでしょうか。

飼育観察

11月。雨晴海岸での採集から2カ月。
児童たちが交代で手入れをしている水槽の中で、生き物たちは元気に暮らしていました。

4年生
ドロメとかもだんだん大きくなってきたりして嬉しいです。

2年連続で水みらいプロジェクトに参加している伏木小学校。
1年前は今の5年生が、生き物を採取、飼育し、活動の発表まで行いました。
この日は、5年生がお世話をしているお魚を4年生が引き継ぎます。

4年生
5年生の皆さんの魚を、僕たちに引き継がせてもらえないかと考え、クロダイとイサキについて調べました。
クロダイについて発表します。
4年生
まずエサは、1日1、2回、2~3分で食べきれる量を与えるとよいということがわかりました。

一生懸命調べたことを、5年生に聞いてもらいます。
さらに、飼育の仕方について質問する場面も。

4年生
エサが残っていることがありました。エサを与える量が多いのですか?
5年生
帰るときにエサがちょっとだけ残っていたら、(次あげる量を)少なめにしたりとか、(エサを)細かく砕いて入れます。

自分たちが経験したことを、優しく教えてくれる5年生。
4年生も真剣な表情で話を聞きます。そして・・・

4年生
僕たちに魚の世話を任せてもらってもいいですか?
5年生
よろしくお願いします。
5年生
さみしいって気持ちもあるけど、今の4年ならいけると思います。
4年生
大切に、絶対に死なせないように育てていきたい。

これまで5年生が大事に守ってきた生き物たちと、2年生が自分たちで採取した生き物たち。
2つの水槽の飼育が始まりました。

発表会

そして2月。児童たちの姿は魚津水族館にありました。
プロジェクトの集大成としておこなわれる発表会の参考にするため、生き物の生態や飼育の様子を見学しに来たのです。

富山湾にすむ様々な種類の生き物を観察することができる、魚津水族館。
中でも、富山湾で発見された珍しい深海魚「アカナマダ」の胃の内容物を見た児童たちは・・・

4年生
(こんなもの食べてたんだって)ええ~!
4年生
(海を)きれいにしないとだめじゃない?かわいそう。

学芸員への質問コーナーでは、学校の水槽で育てている生き物についての
疑問や悩みを投げかけました。

4年生
エサを食べないときはどうすればいいですか?
魚津水族館 吉岡 映美 学芸員
魚とかエビとかどんな生き物もそうだけど、寒すぎるとごはん食べなくなっちゃいます。
4年生
イサキが冬になってからエサをあげても食べず、水槽の端に隠れてじっとしています。
どうすれば活発に動くようになりますか?
魚津水族館 吉岡 映美 学芸員
水槽の中の汚れをみてあげるっていうのももちろんあります。
水槽って砂入ってますか?砂入ってる。砂入ってたら、砂の中に汚れがいっぱいあるパターンも実はあります。

飼育のプロに話を聞くことで、発表のヒントを得ることができたようです。

水族館で学んだことを参考にして、早速発表の準備へ。 3年生へ生き物により興味を持ってもらえるよう、クイズを作ります。

4年生
②の答えは?アサリ。正解は「寒いから」。

本番まであとわずか。
はたしてどんな発表になるのでしょうか。

水の生き物の発表会を控えた伏木小学校。
本番の日がやってきました。
発表を聞くのは1つ下の学年、3年生です。
まずは、5年生から引き継いだ、イサキの発表です。

4年生
これからイサキの発表を始めます。
からだの色はオリーブ色で、冬になると茶色になります。私たちのイサキはどんどん黒くなっています。魚津水族館の人に尋ねると、成長しているからとわかりました。白い点があると病気かもしれないので、注意が必要だとわかりました。
4年生
私たちが飼っているエビの名前は、スジエビモドキです。
体色は基本透明ですが、ストレスなどで白くなります。

クイズ形式の発表も行いました。

4年生
①エサの影響
②病気
③寒いから
正解は②の病気です。人間と同じでエサを食べている時に口を傷つけたり、
ばい菌が原因で口内炎ができたのかもしれないです。
4年生
ドロメは1年以上生きることはできるでしょうか。
正解は、できる
長生きさせるには、水をかえることで、水槽の汚れが落ちて水がきれいになり、長生きできるかもということがわかりました。

3年生たちに伝わるよう一生懸命発表していきます。
そして児童たちは学んでいくうちに、海が抱える問題にも気づきました。

4年生
魚の命を守るためには、海をキレイにすることが大切だとわかりました。
海がごみだらけだと、魚が(ゴミを)食べてしまって、魚の命を失うことになります。
4年生
海を守ることで魚の命を守ることになるとわかりました。
3年生
僕も4年生になったらやってみたいです。
3年生
ヤドカリやエビなどがもっと長生きしてほしいと思いました。

発表を無事終え、児童たちは何を感じたのでしょうか。

4年生
真剣に、熱心に聞いてくれてて、今まで頑張ってよかったなって思いました。
4年生
クイズに答えてくれて、あってたら喜んでて、参加してくれてるって感じで嬉しかったです。
伏木小学校 土合 洋子 先生
自分たちの住んでいる地域にこんな素敵な場所があるんだっていうことを
再認識できたような気がします。
だからこそ海を守っていきたいとか、魚の命を守っていきたいだとかっていう意識につながったんじゃないかなと思います。

海に飛び込むことから始まった伏木小学校4年生たちの挑戦。
採取や飼育を通して、命の大切さや海の問題まで学んできました。
「生き物を大切にする」その優しい気持ちが育まれたのではないでしょうか。

相ノ木小学校

2025年、9月。
上市町を流れる白岩川です。
この場所にやってきたのは、上市町立相ノ木小学校4年生の児童たち14人。

生きもの調査

魚津水族館の不破さんと森さんも一緒に生き物採取を行います。

魚津水族館 不和 光大 学芸員
まず、魚の採り方から説明します
下流側に網を置いて、隠れている草の中をキック!キック!
して追い込んで採ってください。

準備はOK!どんな生き物を見つけることができるのでしょうか?

魚津水族館 不和 光大 学芸員
さっき教えた通り、下流に網を置いて足でキックね。

勢いよく生き物採取を始める児童たち。
でも…うまくいかないみたいです。

4年生
おらん。

雨上がりで水かさが増して濁った川に大苦戦。

魚津水族館 不和 光大 学芸員
ここに、網を置いてキック!キック!
4年生
あっ、入った!
魚津水族館 不和 光大 学芸員
おっ!入った?エビも入るし。いろいろ入るんだよ

徐々に児童たちの網に川の生き物が捕まり始めました。

4年生
これ魚?
なんか採れた?
4年生
動いとる!動いとる!なんかめっちゃチビの採れた!

生き物を採る楽しさを体感する児童たち。
魚を扱うのにも慣れてきました。
1時間程採集を行った後、不破さんが生き物の解説をしてくれました。

魚津水族館 不和 光大 学芸員
これモクズガニって言います。これね、日本のカニですよ。ちゃんと。
4年生
かわいい~。
魚津水族館 不和 光大 学芸員
これは、ヌマチチブ。ハゼです。お腹に吸盤があるんだよ。
ちょっとした坂とか関でも登れる。
次は、エビ。きれいな色しているね。
これね、スジエビって言います。これもね、海から上がってくるんだよ。

捕まえた生き物を持ち帰る前に・・・

魚津水族館 不和 光大 学芸員
一緒の水槽で飼うと食べ合います。だから別々で飼うか、考えましょう。
小さい水槽に分けて飼ってみる?

カニと魚は別々の水槽で飼うことに。

魚津水族館 不和 光大 学芸員
ちっちゃいエビは?魚と飼ってみる?よし、じゃあそうしよう。

飼い方も決めた児童たち。
学校に帰って、捕まえた生き物を飼う水槽作りを行います。

魚津水族館 不和 光大 学芸員
石積んで、隠れ家とかにしたらいいから。

捕まえた生き物を入れて、自分たちの水槽が完成。
ここから、初めての生き物研究がスタートします。

飼育観察

10月。
採集から1ヶ月が過ぎた頃、実は水槽の中の生き物が減っていました。

4年生
たくさん魚が死んじゃって…ヌマチチブが共食いしているから。
4年生
後は、環境だと思う。水槽の。

悩んでいる児童たちのために、不破さんが来てくださいました。
この1ヶ月の疑問を聞いてみることに。

4年生
ヌマチチブが仲間を食べたりしてしまって、生き物の数が少なくっていると思います。
別の水槽に移した方がいいですか?
魚津水族館 不和 光大 学芸員
小さい魚いっぱいいたよね?みんな食べられちゃった?
ヌマチチブは肉食の魚なので、口に入る物は結構食べちゃいます。
魚津水族館はでっかいヌマチチブと少し小さめの魚なども実は一緒に入っています。
ある程度お腹いっぱいにしておくと食べなかったりします。

共食いは、空腹によるもの。どんどん疑問を投げかけます。

4年生
最近ほとんど大きなヌマチチブしかエサを食べてないけど、どうしたらいい?
魚津水族館 不和 光大 学芸員
エサは同じ場所からあげてる?
4年生
うん。
魚津水族館 不和 光大 学芸員
毎回同じ場所からあげてる?
そこからエサが来るってことをヌマチチブは覚えちゃったんだね。
エサのやる位置を変えてみよう。

一匹の魚がエサを独占する状況は、変えられると教えてくれました。

4年生
魚が住みやすい水槽にするには、水草とか石はどれくらい
あった方がいいんですか?
魚津水族館 不和 光大 学芸員
僕らがよく言うのは、お手本は自然の川です。
今入っているヌマチチブとかヨシノボリとかがいた川はみんな見てきたよね? 一緒に入って。あの環境を手本にして作るといいです。

魚たちを長生きさせる飼育を目指す児童たち。
これからの飼い方を自分たちで話し合うことに。

4年生
白岩川の環境とかを見て、新たな知識を身に付ければいいと思いました。

もう一度川へ行こうという意見が。
でも、生き物採取は行わないという意見の児童も。

4年生
また新たな魚を入れると、その入ってきた魚も困るし、
今までいたヌマチチブとかヨシノボリも困ると思う。
魚津水族館 不和 光大 学芸員
環境とかも川の方が良いと思うし、川の方が広いし、生きやすいから。

意見を出し合う子どもたち。
白岩川へもう一度行って自然の環境を観察はするけども、 新しい生き物は今の生き物の為に採らない。そう決めました。

魚津水族館 不破 光大 学芸員
今持っている知識よりも深く知りたいことがあるから
川の観察をしようとするのはすごくいいことだと思うので。

今いる生き物を守る為にもう一度川へ。
ここから再スタートを切ることになりました。

11月。

肌寒くなってきた河川敷に、再び相ノ木小学校4年生の姿がありました。
生き物を減らさない水槽作りを目指して。
まずは、川の環境調査から。

手本となるはずの川の環境ですが、季節が過ぎ、水温はかなり下がっているようです。
生き物たちは大丈夫なんでしょうか?

4年生
お~!ウキゴリ!でかい!

冷たい川の水の中でも、生き物はたくさんいました。

4年生
食べようとしてる?
魚津水族館 不和 光大 学芸員
食べようとしてない。落ち着いた環境じゃないとご飯食べない。
何℃って言ってたっけ、水温?
4年生
6℃
魚津水族館 不和 光大 学芸員
6℃!6℃は寒いね。

適温は、15℃~20℃。かなり冷たいです。
苦しい状況ですが、砂や水草などが多い川は手本にするべきと学びました。

発表会

今回は、捕まえた生き物を川に放して新たな知識だけ持ち帰ることに。
年が明けて、2月。
相ノ木小学校の4年生たちは、これまで学んだことを発表会する為、練習を行っていました。

4年生
他の人が言っているときは、顔を上げた方がいいと思う。
4年生
メダカは外来種。ニジマス、ブラックバス、ミドリガメ…

半年間命と向き合って、調べてきたことをまとめています。

4年生
じゃぁ、もう一回最初からいってみるよ。

さて、一体どんな発表になるんでしょうか。
いよいよ発表当日。
今日は、3年生に向けて半年間の成果を伝えます。

4年生
うまく伝えられるように工夫して3年生に話せるようにしたい。
4年生
今まで学んできた環境のこととかを伝えていきたいです。

発表スタートです。

4年生
これから私たちが飼っていた生き物を紹介しようと思います。
4年生
皆さんヨシノボリとは知っていますか?
特徴はおなかに吸盤があり、これを使って水槽のガラス面をすいすい
登ることができるそうです。次は~ヌマチチブ!
イエーイ!
4年生
皆さんはヌマチチブとは何か知っていますか?
"流れのはやい川やある程度の段差も移動できます。
頭が大きくてずんぐりしています。

モニターを使って、3年生にもわかりやすく丁寧に伝えました。

4年生
これは、観察日記です。
大変なことも多いけれど、生き物のお世話を通して心に残ることがたくさんありました。
気を付け。ありがとうございました。

発表を終えて

4年生
お父さんお母さんに言おうと思いました。
4年生
わかっていてくれてそうだったから、
自分の思いが届いたのかなと思って嬉しかった。
4年生
生き物が増える未来を作っていきたいです。
渡辺 大貴 先生
私も一緒に学ぶこと多かったですし、良い経験させてもらったな感じています。
本当にありがとうと伝えたいです。

生き物が増える未来を作っていってね。

学校の周辺で繰り広げられる小さな生き物たちと子どもたちの物語。
飼育や観察を通して、水の大切さや命とのつながりを学んできました。
自然が教えてくれたもの、
それは子どもたちにとって大切な宝物になりました!

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